スイス(チューリッヒ)~1日目~
この日は朝から嫌な予感がしてた。7a.m発のバスに乗る予定で起床したのだが、目覚めた後Flixbus(1)の公式アプリをチェックしてみると、7:30発の便に変更になっていた。
ー変えるならせめて前日の夜までにしてくれよ、、
格安バスなので仕方がない。ゆっくり準備できていいじゃないかと思うことにした。
準備を終え駅に向かう。ドイツは7月半ばとはいえ、朝は少し肌寒い。
待っているとお馴染みの緑色の車体が見えてきた。
降りてきたドライバーにQRコードとパスポートを見せて席に座る。
車内はまばらに人が座っていた。ひとまずハノーファーでの乗り換えまで寝るとしよう。
ハノーファーに到着した。ここから次のバスがくるまで2時間程待ち時間がある。
初めてくる町なので探索することにした。
とりあえず、「ハノーファー 絶対行くべき」で検索したところ
「ハノーファー市庁舎」と「ヘレンホイザー・ゲルテン」なるところが有名らしい。
時間的に市庁舎の方に行くことにした。ついでに昼飯を買いにスーパーも寄ろう。
Google map(2)(以降GMと表記)を頼りに20分ほど歩くと市庁舎が見えてきた。
市庁舎というより王宮のような外観をしている。
写真を撮っていると
「やぁ、写真を撮ってくれませんか?」
と中年夫婦がスマホを差し出してきた。
「いいですよ。」
写真を撮り終えた後、市庁舎の中に入った。中も宮殿のような作りになっており、綺麗だ。年代ごとのハノーファーの街並みがレプリカで再現されている展示物があり、面白かった。
一通り回ったところで駅に戻ることにした。外に出ると雨の匂いがした。
ドイツは天気が変わりやすい。そのため傘を持たない人が多い。
少々の雨ならフードでしのごうという考えなのだ。私は小雨であろうが傘をさす。
駅について1時間ほど待つとバスが来た。なんとこのバス30分遅れである。
―待てよ、このままだとチェックイン時間に間に合わねぇ。いや、ギリ間に合うか。
チェックインは12p.mまでで、到着予定時刻が22:50なので大丈夫だと思った。
そこから11時間後、ドイツとスイスの国境で事件は起こった。
バスが止まって動かない。外を見ると青いランプが点滅していた。
―パスポートチェック(3)かな
と考えていると車内に警察官が乗り込んできた。
ん、これは警察官じゃないぞ?背中を見ると「ZOLL」と書いてある。税関だ!
「皆さんこんばんは。皆さんのパスポートを提出してください。」(ドイツ語なので予想)
―おいおい、こっちはチェックイン時間があんだよ!
当然逆らえるはずもなく、パスポートを渡し荷物を持って外へ出た。
くうっと伸びをする。さすがに少し疲れた。肩がばきりと音を立てた。
バスのほかにも数台、乗用車が駐車場に停めてあり、同じくチェックを受けているようだ。誘導されるがまま歩いていくと、10mほどの長いすが見えた。
「ここに座って荷物は足の間、手は膝の上に置いて動かないでください。」(予想)
その状態で5分ほど待機したが、何もする様子がなかったのでスマホでホステルの電話番号を調べていると
「スマートフォンはしまいなさい。」
と注意された。なら早く解放してくれ。
その後すぐに、犬を連れて職員がやって来た。犬が私たちの足元を歩いていく。おそらく麻薬捜査だろう。2周ほど周ったところで、私たちの組は解放された。疑いが晴れたか。とりあえずホステル(4)に電話してみたが、繋がらない。まさかもうレセプションが閉まっているのだろうか。その後20分程待機したところで再びバスに乗り込み、出発した。この時点で23:43。チェックインは絶望的だった。
00:37、やっと目的地であるチューリッヒに到着した。すぐにスマホの国設定とAPN(5)を変更し、データ通信を可能にする。ここからホステルまでの道のりをGMで調べると、次の電車の時刻が4a.mになっていた。終電時刻をとっくに過ぎていたのだ。
試しに徒歩で調べてみると、46分とでた。まじか。
46分歩いて1:30にホステルについても、中に入れる保証はない。だったら近くの駅で夜を明かすか。いや、それならホステルの前で野宿するのとさほど変わらない。
しかし電話が繋がらないということは、レセプションは閉まっているだろう。
なんだ、ホステルに入れる可能性ほとんど0に近いじゃないか!でも行かなけりゃ、確実な0だ!!
ということで、徒歩で向かうことにした。夏でよかった。
「一般的にはとても治安のよい国」という地球の歩き方の言葉を信じて、デートに向かない坂道を上っていく。
思えば朝から嫌な予感がしていたんだよなぁ。こういう日はとことんついてない。
まぁ明日はいいことあるだろう。That’s life。
とても静かだ。川の流れる音が聞こえる。水面に月が揺れていた。
ドビュッシーの月の光が似合うななどと考えながら、オレンジ色の街灯をくぐっていく。
1:30、やっとホステルに到着。玄関に明かりがついている。これはもしや、、開いて、、いる! なんとか野宿は回避できた。室内は真っ暗だ。玄関で靴を脱ぎ、レセプションを探すと人がいた。ビール片手にスポーツ観戦をしている。いや、いるんかい。
「すみません、チェックインをお願いしたいです。」
「今日?もう2時近いけど笑」
もろもろの事情を説明し、無事チェックインできた。部屋は階下にあった。トイレとシャワーは二つ。宿泊人数に釣り合ってない気もするが、早起きすれば待たないだろう。
―今日は疲れたな
ロッカーがなかったので、リュックサックと共に眠りについた。
注釈*
- Flixbus: 主にヨーロッパで利用可能な格安バス。旅行の移動手段はSkyscannerとFixbusで値段と時間のコスパを吟味して決めている。
- Google Map: 海外旅行には必要不可欠なアプリ。旅行前に行きたい場所に”お気に入り”などのピンを立てておいて、現地に着いたらひたすらピンを立てた場所をまわる旅行スタイル。
- パスポートチェック: 陸続きなヨーロッパでは空港でなくとも国境を超える際、パスポートチェックが行われることが多い。スタンプなどは押されず、割とさらっと終わる。
- ホステル: 一部屋に1~3段ベッドが複数台置かれ、複数人で寝泊まりする。シャワー、洗面所、トイレ、キッチンは共用である。要するに、自分のベッド以外は全て共有スペースとなる宿泊施設のこと。ただし宿泊費は安く、ポーランドで泊まったホステルは一泊800円程だった。
- スマホの国設定とAPN: 私はLycamobileという会社のSIMを利用している。EUローミングができるプランにしておくと、SIM設定で国を選択し、APN(アクセスポイント名)を設定するだけでヨーロッパ中でデータ通信が行える。
今回泊まったホステルは